ほりクリニック

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ヤドリギ療法

癌の統合療法におけるヤドリギ抽出液注射療法とその実践

1.アントロポゾフィー医学における3分節の視点から見たがん
2.癌のヤドリギ療法とその実際
3.癌のヤドリギ療法のEBM
4.これまで当院で取り組んだ症例

1. アントロポゾフィー医学における3分節の視点から見たがん

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 まず初めに、アントロポゾフォー医学におけるユニークな人体観を紹介し、その上で、この分野において癌をどのように理解しているか解説してみます。

 従来の人体観では、図1に示すように脳と精神をほぼ一体として捉えてきました。また、精神の機能としての、思考、感情、意志(行為)も、すべて脳の機能のみに還元して理解し、いわば下位の器官は、全て脳に対し受属的な従属的器官として位置づけられています。
 一方、この分野では、感情は、呼吸や循環などの胸部の身体活動に密接に連動しており、脳は、いわば感情を影絵のように反映しているという意味で、二次的な役割を担っていると考えています。

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同様に、意志や行為は、単に脳の命令によって単純に発動するのではなく、こうした機能は、本来的にこの部位に起源を持つ自律的な機能であり、脳は、運動そのものを一方的には実現できないと理解しています。こうした理解は、現在の今日の理解とは一見かけ離れているように思われるかもしれません。しかし、我々誰しもが、どうして、〝胸が熱くなる”という実感を持つのでしょう。また、様々な極限状況で、人の示す命がけの行為を脳のみで実現できると感じられるでしょうか?皆さんは、この単純な事実を素直に振り返ってみてください。実は、現代医学は、まだ、感情や行為の実体すら理解できてはいないのです。
 また、図2の上下端に示すように、人体のエネルギー供給源を考える時、精神的な無形の世界に由来する精神的(非物質的)エネルギー源と、地球由来の物質的なエネルギー源の二つに支えられていると理解しています。これは、ちょうどハイブリット車が、ガソリンと、電気の二つのエネルギー供給源を持つのと同じように理解できるのです。次に紹介する3分節の視点も、こうした理解に基づく人体の別の理解の仕方といってもいいでしょう。

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 三分節による人間理解に基づく、健康と病気の定義(図3)
“健康とは、対極的な作用がダイナミックにバランス化した状態”
 図3の右に示すように、人体には、頭部において最も強く作用し、次第に弱まって手足末端まで作用する傾向、作用などがあります。この作用は、中心へと向かう求心的な傾向、物質を分解する、崩壊する、硬化する、冷やす傾向などです。この部分は、神経感覚系と呼びます。一方で、図3の右に示すように、神経感覚系とは対極的に、横隔膜から下の代謝系と手足を含めた部位からは、周辺へと向かう遠心的な傾向、温める傾向、運動への傾向、物質を消費し喪失していく(固体から液体へ),あたためる傾向などが上方へと働きかけます。この部分を代謝四肢系と呼びます。この作用も上方へ、中枢へと向かうにつれ次第に弱まっていきます。このそれぞれを担う代表的な臓器・器官として、神経(広い意味では神経に関連するプロセス)と血液(臓器としての血管を超える生命過程としての)があります。この両者を、中間の“リズム系”と呼ばれる領域が、無私な中心となってバランス化します。この中心器官が、いずれもリズムを持って機能する心臓と肺です。そして、この両極のバランス状態が健康と定義されます。

 “病気(癌など)とは、対極的な作用がバランスの喪失し、一方に偏った状態”
図3に示すように上部下部どちらか一方の過程が過剰に作用しすぎるとき、そこに病的な状態が発生します。すなわち、広く知られている病理現象としての“炎症反応”や、“硬化あるいは変性”が生じます。前者(炎症)は、図3の左のイメージに当たり、主に急性炎症の過程として熱や膿の産生で始まり、健康体では、二次的には、例えば傷のように瘢痕化して治癒したり、小児期の多くの感染症のように最終的に治癒します。一方、後者(硬化)は、図3の右のイメージに当たり、一時的には硬化したり変性したり慢性の経過をたどりやすく、逆に、何とか治癒させようとする代謝四肢系からの治癒的な対抗反応として、二次的に炎症反応を引き起こします。こうして、結局、神経感覚系に端を発する上部からの効果の過程があまりに強く作用し続け、それに対抗しうる下部からの熱作用、溶解作用、そして中間にある緩衝系であるリズム系が十分に治癒作用を発揮できなかった時に、そこに癌が発しします。このような一連のアンバランスの結果として、治癒に失敗したなれの果てとして、癌が位置づけられるのです。図2に注目する時、現代の近代都市を中心とした思考偏重傾向は、感情の抑圧と、自発的な意志に基づいた行動を制限することで、発癌傾向を助長することにつながっていることも理解できます。

2. 癌のヤドリギ療法とその実際
 現在、海外においても、日本においても、最も一般的なのは、他の癌治療との併用です。つまり、外科手術、化学療法、放射線療法などと併用して用いられます。このことによって、様々な集学的治療に伴う副作用が軽減されます。いわゆる、QOLが向上します。たとえば、体調全般、食欲、睡眠の質などの改善あげられます。その他、痛みの強さや性質の軽減などです。もちろん、術前や抗がん剤投与前、術後や化学療後に行うこともあります。

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植物としての宿り木 (図4)
 まず、この植物の特徴のひとつについて触れてみます。宿り木という植物は、その名の通り他の植物に寄生して成長します。具体的には、ある種の鳥が、その実をついばみ、木の枝に糞をし、その中の宿り木の種子から、芽が出て、根(寄生根)を様々な宿主の木へともぐりこませ、栄養分を吸い取りつつ、数年もかけてゆっくりと成長していきます。成長するにしたがって、大きくなり、寄生された木は、次第に弱まり、腫瘍に取りつかれた人間のようなプロセスに陥ることもあります。こうしたことから、宿り木は、自然界における腫瘍形成と相関し、人間内部の腫瘍形成に対応するとみられています。行き過ぎれば、人間同様、寄生された宿主の木が枯れることもあり、これが、宿り木が嫌われる理由の一つでもあります。
 次に、ヤドリギ慮法の現状を紹介します。
• Viscum Albumという特定の種の宿り木のみが、原料に使用され、最も数多くの研究成果があります。
• EUにおいて、CAM(補完代替医療)は癌患者さんの40%に普及しています。
• 中部ヨローッパにおいて、最も高頻度に処方されている癌の代替医療薬です。
• ドイツ、オーストリア、スイスにおいて、25%~60%の癌患者さんに使用されています。
• それら各国の主治医たちによって推奨されています。
• ドイツの医師たちには、広く周知されています。
• 各国の医療保険会社に推奨されています。
• 中国や、韓国でも保険適応で処方されています。残念ながら、日本は、アジアでも大きく後れを取っています。

ヤドリギ製剤の種類
宿り木の抽出液から作られる製剤は、数多く存在します。現在、代表的な宿り木製剤の製造元だけでも8社ありますが、まず、代表的な4社の製剤を紹介します。。Weleda社のIscador.。Wala社のIscusin、Abnoba社のAbnoba viscum、Helixor社のHelixor などです。熟達したアントロポゾフィー医師は、こうしたそれぞれの製剤の特徴を熟知し、使い分けています。

以下に、代表的なヤドリギ製剤であるIscador を紹介します。
• 標準化された宿り木の抽出物
• ドイツにおいて最も普及し、研究が進んでいる宿り木抽出液。
• 週に2~3回の皮下注射が基本ですが、経口、経腹腔、経胸膜、経静脈、腫瘍内投与なども行われます。
• ガン細胞への効果: 細胞毒性(細胞膜, リボゾーム), 細胞死, 血管新生の阻害
• 組織への効果:免疫賦活と免疫担当細胞の遺伝子防御を高めます。

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 この分野の創始者であるルドルフ・シュタイナーは、その現象額的(直観的)観察によってこの植物から癌に有効な治療薬が開発できることを見抜きました。その後、様々な研究によってこの直観が如何に正確であったかが科学的にも明らかになりました。
 すなわち、図5に示すように宿り木には、二群の毒性成分が見つかっています。一つは、ビスコトキシン。これは、この植物の末端、特に葉に向かって周辺に行くほど高濃度に含有し、寄生根には含まれません。分子構造は、蛇毒にきわめて類似し、細胞分解的作用(実際に癌細胞を溶解する)をもちます。一方で、宿り木レクチンは、寄生根に最も高濃度に存在し、年を経るにつれ増加します。葉にはわずかしか存在しません。ひまし油(トウゴマの種子から抽出)の植物レクチンに近く、細胞分裂を抑制し、癌細胞の成長を阻害します。

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3. 癌のヤドリギ療法のEBM
具体的な研究成果の一部を紹介します。実際には、EBMに基づく膨大なデータがあります。
研究① 放射線療法に併用した時の、免疫抑制の軽減効果が確認されました。
研究② 原発性非転移性乳がん患者に対する生存率と、抗ガン治療に対する副作用の軽減効果に関する研究。
ヤドリギ療法を併用した治療群710例と非併用群732例の比較研究。図7には、長期生存率で有意差が確認されています。

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図8では、Iscador併用群では、非併用群に比較して、抗がん剤の副作用を訴えなかった患者さんが顕著に多かった結果を示しています(左:併用群、右:非併用群、 濃い色:副作用有、 薄い色:副作用なし)。

4.これまで当院で取り組んだ症例を通じての経験と実感など
 進行がんでは、緩和医療における重要な役割があります。昨年、他界した私の義理の父の場合は、とても、印象的でした。すでに腎臓がんは、手術後に再発し、全身に転移していました。その進展度に比して、あまりに、安らかな緩和ケア―病棟での数か月間は、改めて、この治療の恩恵を身をもって示してくれました。腎臓から、膀胱内から骨盤腔内にまで広く浸潤していましたが、最後まで食欲もあり、ほとんど鎮痛剤を必要としませんでした。
 また、最後の数週間は、肺のレントゲン写真は、真っ白でしたが、呼吸苦はともかく、ほとんど咳や息苦しさの訴えはありませんでした。入退院を繰り返していましたので、理想的な形でヤドリギ療法がなされたわけではありませんでしたが、それでもこのような効果を持つというのは、本当に驚くべきことでした。もちろん、身体面のみではありません。多分に本人の、冷静さが生きたとも思うのですが、最後までユーモアをもって家人にも接してくれた静かな経過にもヤドリギの効果を感じざるを得ませんでした。
 実際、私自身が、この治療薬に確信を持てるようになったのは、ごく最近のことです。それでも、その効果をどの例にもわかりやすく感じ取れたかといえば、実際は、個々の症例によって様々でした。私自身に「効果がよくわからない」と悲痛に訴えた患者さんもおられました。特に、ヤドリギ製剤の種類をAbnova viscumに変えてから、効果がより明確になりました。最近の症例では、ベルリンのハーベルホーヘ共同体病院のHrald Matthes医師は、抗がん剤の投与直前に、Helixor社のヤドリギ製剤を繰り返し静脈内に投与することで、著明に抗がん剤の副作用を軽減できると指示してくれました。実際、ある症例においては、抗がん剤の副作用の劇的な軽減のおかげで、化学療法が長期にわたり頻回に継続可能になりました。
 その後、本年の5月に2週間、ベルリンのハーベルホーヘ共同体病院で、研修してきました。特に、宿り後の外来診療を研修しました。Dubos 先生の診療は、とても心のこもった印象深い物でした。様々な年齢、さまざまな癌に対して、まさに、オードメイドで多様なヤドリギ製剤が処方されていました。特に、Abnov viscum, Iscador,Helixorは、それぞれの体質に応じて選択の必要性を指導してくれました。また、すい臓がんの3年目で、全身転移、肝転移の医師の症例も、驚くべきものでした。超音波でガイドしながら、Abnova viscumを肝臓の転移巣に直接注射する治療でした。すい臓がんの生存率の低さは、広く知られていますが、現役で診療に従事していることには、驚かされました。

 本来、耳鼻咽喉科の開業医であるという、いわば本業の傍ら取り組むということから、特に乞われた症例のみ、ささやかに取り組んできました。ほとんどが進行がんで、末期の状態に近い症例でした。したがって、データや経過を詳細に記録したり、治療効果の評価のために検査をしたりというこのことは、あえて行ってきませんでした。多くの場合、主治医には、知らせたくないという患者さんや家族の希望が強く、ごく一部以外は、本来の意味での統合的診療とは言えないものでした。それでも、経過中には、国内で、海外の講師を交えての症例検討会や、海外の指導医による個人的なアドバイスなどを受けつつ、常に最善の治療を細心の注意深さを持って実践してきました。そして、最近ようやく、こうした経験を通じて本療法の効果と安全性について明確な確信を抱くに至りました。
 すでに、中国や、韓国でも、保険適応のもとで患者さんが、この治療薬の恩恵に預かれているとのことです。我が国においても、この療法とアントロポゾフィー医学的な診療姿勢が共感を持って多くの医師や医療関係者に知られ、患者さん方の心身両面にわたる苦しみを少しでも軽減し、病を持ちつつも希望を持ち、生きる真の意味を医療者と共に問い続けることができるような日が来ることを、心より祈念したいと考えています。

まとめ
•アントロポゾフィー医学では、癌は、頭部の神経感覚系に由来する効果のプロセスが過剰な結果生ずる疾患群の一つに位置づけられることを紹介しました。
•ヤドリギ療法は、ドイツを中心として中部ヨーロッパにおいて最も普及している癌の代替医学療法で、中国や韓国においても普及し始めていることを紹介しました。
•インビトロ、インビボ何れにおいても多くの研究の裏付けのあるEBMに基づく治療法です。
•様々な宿主の木に寄生する宿り木という特異な植物から作られ、数社から製品が販売され、我が国においても利用可能です。
•過去約7年間に当院で取り組んだ宿り木抽出液注射療法の経験を紹介しました。この経験を通じてその有効性と安全性に確信を抱くに至りました。


後書き
 本来、耳鼻咽喉科の開業医であるという、いわば本業の傍ら取り組むということから、特に乞われた症例のみ、ささやかに取り組んできました。ほとんどが進行がんで、末期の状態に近い症例でした。したがって、データや経過を詳細に記録したり、治療効果の評価のために検査をしたりというこのことは、あえて行ってきませんでした。多くの場合、主治医には、知らせたくないという患者さんや家族の希望が強く、ごく一部以外は、本来の意味での統合的診療とは言えないものでした。それでも、経過中には、国内で、海外の講師を交えての症例検討会や、海外の指導医による個人的なアドバイスなどを受けつつ、常に最善の治療を細心の注意深さを持って実践してきました。そして、最近ようやく、こうした経験を通じて本療法の効果と安全性について明確な確信を抱くに至りました。
 すでに、中国や、韓国でも、保険適応のもとで患者さんが、この治療薬の恩恵に預かれているとのことです。我が国においても、この療法とアントロポゾフィー医学的な診療姿勢が共感を持って多くの医師や医療関係者に知られ、患者さん方の心身両面にわたる苦しみを少しでも軽減し、病を持ちつつも希望を持ち、生きる真の意味を医療者と共に問い続けることができるような日が来ることを、心より祈念したいと考えています。